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『もう、関わらないでくれ──』
真佑巳の言葉が私の胸をえぐった。
なぜか解らないけれど、自分がそう告げられたように感じたんだ。
真佑巳は、直子にもう一度詫びてアパートの外へ出た。
「関わるなって何よっ!?
どうしてよっ──!!」
甲高い珠希の声が、追いかけてくる。
「やめなよ。近所迷惑でしょうが。解んないの?──」
直子の厳しい声を背中に聞きながら、私たちは真佑巳の車に乗り込んだ。
「痛むか?」
「うん……」
「もう少しだから」
「うん」
車のなかでは、それしか口をきかなかった。
真佑巳も怪我をしてるみたいに、顔を苦しそうに歪めてハンドルを握っている。
その横顔をそっと盗み見る私は、ますます胸が重く痛くなった。
真佑巳に支えられて救急外来の受け付けを済ませた。
診察室に入ると、こっちが身体を心配してしまうほどぶくぶくに太った中年医師が『どうぞ』と、人懐こい笑顔で丸椅子を手のひらで示した。
その笑顔にちょっと安心して症状を説明すると、レントゲンを撮ってみましょうと言う。
結果は骨に異常はなく、左足首の靱帯の損傷と、腰の打撲ということだった。
足首を固定され、ぐるぐると包帯を巻かれて、湿布薬をもらい帰路についた。
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