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真佑巳はまったく私を見ない。
見なくていいと思った。
今の私は醜い──。
──嫌だよね。
こんな女、嫌だよね。真佑巳?
そう自覚しているくせに、止められなかった。
「……このままじゃ嫌だ。
このままじゃ辛いだけだよ。
ね、本当のこと言って。
じゃないと私、解らなくなる。真佑巳のことが……。
ねぇ──!」
私は、真佑巳の腕を両手で掴んで揺さぶった。
「仕方……なかったんだ……」
真佑巳はフロントガラスを睨んだまま、絞りだすように言った。
「……なに、それ」
がっくりと力が抜けた。
真佑巳の腕を放して、シートに背中をあずける。
──『仕方なかった』なんて、そんなありきたりな言いわけ……?
「あいつが……『約束しなかったら何するか解らない』なんて言うから……」
「自殺するとでも思った?」
私も前を向いたままで聞く。
「あいつならやりかねないって……」
「そんなの、常套句に決まってるじゃない。
勝手にしろって突き放せばよかったんだよ。
あんな自分本位の女が自殺なんかするわけない」
真佑巳にはできないと解っていて、私は皮肉を口にする。
優しい真佑巳だから、私も珠希も傷つけたくなくてついた嘘なんだって、とっくに頭では理解しているんだ。
でも──。
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