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「いつ?……いつ彼女と話したの?」
「……あいつが、アキラが男と逢ってるって言いにきた日だよ」
「本当はドアを開けたんだ……。
それで彼女に縋りつかれて、約束を?」
「あぁ……」
真佑巳はシートにもたれかかり、両目を手のひらで覆った。
頭痛がする、とでもいうように。
コン──と助手席のドアを叩く音に振り返る。
フリースのパーカーの前をかき合わせて、寒そうに立っている直子がいた。
「車、見えたからさ」
私を支えてくれながら直子は言い、車から降りた真佑巳に「ご苦労さま」と頭を下げた。
真佑巳も黙って顎を引く。
「ありがと、直子。
……彼女は?」
「それより、あんたの怪我は?」
「あぁ、骨には異常なかった。大丈夫」
「そっか。よかった。
珠希のことは部屋で話すよ。
真佑巳くん……今夜はもう遅いから。
明日、時間作ってもらえる?
ってか、もう彼女にも時間と場所伝えたんだ。
明日の午後3時、K駅前のタリーズに来てって。
真佑巳くんも来てね。
ばらばらで話聞いてても埒(らち)あかないから、お節介だと思ったけど勝手に決めさせてもらったから。
アキラを早く楽にしてやりたいし。
じゃ、おやすみなさい」
直子は真佑巳に手のひらを向けて、私に『行こう』と促した。
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