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私は真佑巳を振り返る。
真佑巳は今にも泣きそうな迷子みたいな顔をしていた。
「病院……連れてってくれてありがと。
一方的に責めてごめん。
怪我したせいで、自分のことしか考える余裕なかった。
真佑巳の気持ち、考えなかった……」
「謝るなよ。
アキラは何も悪くない。
明日、またちゃんと話そう」
「うん……」
「おやすみ。ゆっくり休んで」
車を挟んだ向こう側とこっち側で、切なく視線をからませる。
車一台の距離がとても遠く感じる。
「アキラ。風邪引くよ。入ろう」
直子に腕を引かれて、ぎこちなく踵を返す。
もう一度振り向いた。
真佑巳は私のことを黙って見つめていた。
「疲れたでしょ? コーヒー入れてあげる」
「ありがと。
むしょうに煙草がほしい」
「今夜はやめときな」
そんな会話をしながら階段をゆっくりと上がり、部屋に入ってドアを閉めたとき、真佑巳の車が走り去る音がした。
一瞬、胸が塞がれて泣きそうになった。
──真佑巳。
私たち、明日の今頃どうしてるかな。
また同じ気持ちで、真佑巳の隣にいられるかな……。
好きだけど……、今もすごく好きだけど。
好きな気持ちだけじゃ、どうしようもないこともあるんだよね。
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