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「珠希となんか話した?──あ、ありがと」
直子が手渡してくれたコーヒーカップを両手で包み込む。
「うん。美味い」
ホッとしたら思い出したように、足首が痛み出した。
思わず眉をしかめる。
「足、痛むんだ?」
こたつに脚を入れながら直子が聞く。
「うん。さすがにね」
「あ、そういえば。
治療費払うって言ってたよ」
「……珠希が?」
「そ。なんかしおらしくなっちゃってさ。
あんたのこと怪我させて、我に返ったんじゃない?」
「ふうん……でも、いいや」
「なんで? めいっぱいふんだくってやればいいじゃん!」
直子は頬杖をついて、からかうように目をきょろりと見開いた。
「故意に怪我させようとしてやったわけじゃないし。
恐ろしく運動神経鈍い私も悪い」
「ホントにいいの?」
「うん?
実は珠希に負い目感じててもらおう──なんてひそかに企(たくら)んでたりする、かも?」
私も直子を真似て頬杖をつくと、にっと笑って見せた。
「ホントはそんなこと思ってもないくせに。
だからアキラ、好きだよ」
直子の手が伸びてきて、私の頭をがしがしと撫でる。
「やめてよ。照れるから。素面でそういうことするなって」
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