‡ 女友達 ‡

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  直子の手をつかまえて、ぺしっと叩く。 「もう、アキラ可愛いったら。 コーヒーおかわり入れようか?」 「ううん。大丈夫。 ありがとね、直子」 「何が?」 「いろいろ……」 「何もしてないよ」 「そうやって直子がそこにいてくれるだけで、ホッとするんだ。だから」 「そっちこそ素面で言わないでよね」 直子が照れてる。 私は自然に笑顔になって、「やっぱりおかわりください」とカップを差し出した。 「真佑巳くんとは? なにか話した?」 二杯目のコーヒーを半分ほど飲んだとき、直子が聞いてきた。 「……うん。 珠希と約束したのは本当だった」 私は真佑巳の言葉をそのまま直子に伝えた。 そして、『あぁ、やっぱり夢じゃないや』と思う。 縫い針で誤って指を刺したときの痛み。 あの痛みが胸の一点を刺す。 ちくっ……ちくっと。 やがてその痛みは、こぶしで叩かれたようになって、重く鈍く広がっていく。 真佑巳は珠希と約束した。 私と別れたら珠希と付き合うって。 珠希はその言葉に縋って、『消えて』と強く願ったんだ……。 私がいなくなればいいって。 「アキラ、ほら」 目の前に封を切った梅しばが差し出される。 「あ、どうも」  「どういたしまして」 直子も梅しばを口に放りこんで飴玉のように転がした。  
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