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結果、真佑巳くんくらいの愛情が一番心地いいんだと気付いた……ってとこかな」
直子が自分の台詞に満足したというように、うんうんとうなずく。
「なるほど。
一応、真佑巳に戻りたいっていうちゃんとした理由があったんだ」
私はいつもの悪い癖で、他人事のようにつぶやいた。
本心は、『そんな身勝手、好き勝手が通るなら、本気で人を好きになるって行為が成り立たなくなるだろう』──だったけど。
「確かに、別れてから気付くことあるよね。
珠希の場合は乗り換えた男が最悪だったから、真佑巳くんのいいところばかりを思い出したんだろうな。
珠希がアキラにしたことは最低の行為だよ。
絶対謝らせる。
でも……珠希の必死さも解る気がするんだよ。
ほら、アキラが織人くんと逢ってるところを見ちゃったでしょ?
あれが引き金になったんだと思う。
真佑巳くんって彼氏がいるのに、他の男と──。
だったら私が奪い返すってね。
真佑巳くん、ホントにいい人じゃん。
約束のことだって真佑巳くんにしてみれば、アキラとは別れるつもりないんだからさ。
珠希を帰すためのその場しのぎの約束──ってことだったんだと思うよ。
そのうち珠希があきらめるだろうって」
「……うん」
「ごめん! 珠希や真佑巳くんの味方してるわけじゃないんだよ?」
直子は私の抑揚のない返事を敏感に感じ取って、声を明るくして言った。
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