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「謝らないでよ。
直子の言うこと解る。
私が織人と逢ったことが、そもそも間違いだったんだ。
珠希が私を浮気女だって決めつけたのも、真佑巳が私を信じられなかったのも……自分の蒔いた種。
男の前で泣いてたら、そりゃあれこれ勘ぐるよね。
正直ね。
織人に逢って、自分があんな醜態さらすなんて思ってもなかったんだ。
別れた時とまったく変わらない優しい織人が、懐かしくて嬉しくてさ。
でも、珠希にはそうは映らなかっただろうね」
「まぁ……ね。
でもさ、織人くんに逢うように勧めたのは私だもん。
アキラが悪いわけじゃないよ。
それに珠希に見られたのが、私が帰ったあとってのも間が悪かったよね」
直子が、悔しそうに唇を尖らせる。
「うん……。
済んだことはもう、どうしようもないけどね。
それと。
『約束する』って言葉。
その意味の重さとは逆に、簡単に口にできちゃうのがいけない。
真佑巳が苦し紛れに口にした上辺だけの約束でも、珠希は真佑巳の本心だと受け取ってストーカーまがいのことしたでしょ?」
「確かに。
あまり深く考えず『解った。約束する』って言っちゃうかもね。
まぁ、破っても『アハハ。ごめん。』で済むようなちっちゃいことだけどね、たいがい」
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