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「私が『約束』ってやつに神経過敏になり過ぎてるんだよね。
昔のトラウマ引きずり続けて……ほんと女々しいったらないよ。
珠希……。
私が別れるって言うの待ってるつもりなのかな」
なんか、めちゃめちゃ重いな。
こんなおかしな境遇に立たされてる人が、私の他にどれだけいるのだろうか。
「とにかく明日、だね。
珠希が現れればの話だけど」
直子は飲み干した缶を脇に寄せて、不自然な間をおいてから口を開いた。
「アキラはさ……」
「うん?」
「真佑巳くんじゃなきゃ駄目なの?」
「……」
直子の言葉の真意が解らず、眉を寄せる。
「いや、ね。
私、正月休みに繁ちゃんの実家に行ってきたじゃん?」
「あぁ。
そういえば、詳しく聞いてなかった」
『真佑巳じゃなきゃ駄目なのか』と、直子が渡部くんの親に会いに行ったことがどう繋がるのか?
私は、不自然な格好で座っていたために痺れていた脚をそろそろと伸ばした。
「いててて」
年寄りみたいだ。
「大丈夫?」
「うん。
渡部くんの話、聞かせて」
「……親に会ってって言われたの初めてだったんだ。
繁ちゃんの前にも付き合った男は何人かいたけど、体の関係はあっても友達の延長みたいな?……親の話なんかしようとも思わなかったし。
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