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直子は余裕の微笑みで、テーブルの上に乗せた私のこぶしをぽんぽんと叩いた。
「こんなヘンテコな頭した、まったくしおらしくない男勝りの女を気に入ってくれる家族がいて、ホントありがたいよ」
「なに言ってんの。
直子のよさは誰より私が知ってる。
私に言わせれば、『渡部くん、直子に見初められてラッキーだったね』だよ」
「もう。アキラってば喜ばせるねぇ」
「ホントだって。私が男だったら絶対直子に惚れてる」
直子は鼻に皺を寄せて嬉しそうに「ふん」と笑った。
そして、すぐに頬を引きしめると私を真直ぐに見つめてこう言った。
「真佑巳くんじゃなきゃ駄目なのって聞いたのはさ。
……アキラが真佑巳くんを好きって気持ちは、私にもひしひし伝わってきてるけど。
アキラにとったら初めての彼氏なわけでしょ?
そんなに自分を追い込まなくてもいいと思ったんだ。
『私には真佑巳しかいないんだ』とか、『珠希と闘わないと』とかさ。
アキラのなかで今、真佑巳くんがどれだけ大きな存在になってるか、それは私には量れないことだけど……。
明日真佑巳くんと話をしてさ、自分の気持ちとももう一度しっかり向き合ってみるといいんじゃないかなって」
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