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「ホントに一人で平気?」
直子はヘッドライトを消して、私の顔を覗き込みながら聞いた。
「うん。大丈夫。
なんかごめん。結局迷惑かけちゃった。
いったん家戻っててくれていいよ?」
「いや、いいよ。家で待ってても気が気じゃないし。
それに、もしかしたら──珠希を捕まえられるかもしれない。
今夜ヤツにも直談判できれば一石二鳥!」
直子は私の緊張を解くように明るく笑う。
「……わかった。ありがと」
土曜の夜。
家で夕飯を済ませ、直子の車で真佑巳のアパートにやって来た。
一人で大丈夫だからと言ったのに、直子が『わたしが言い出したことなんだから』と譲らなかったのだ。
『子供じゃないんだから』と言っても、『ははは。恋愛にはてんで疎いんだから、子供と変わらんでしょうよ』と一蹴された。
確かにそうだと素直にうなずいて、直子の好意に甘えることにした。
なんか甘えてばかりのような気がするな。
「じゃあ、行ってくる」
「おー。
玉砕覚悟でね。
ぶつかることを怖がったら、本当の解決は見えないよ」
「うん」
私は強くうなずいて、助手席から降りた。
もう一度、二階の真佑巳の部屋の明かりを確かめる。
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