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「なに!?」
珠希は私の不躾な視線を不快に思ったのか、重たそうなまつ毛をバシバシと瞬いて、いっそう睨みをきかせてきた。
──うぅ……普通に怖い。
「消えろって、そちらに言われる筋合いないと思うけど」
私は精一杯の虚勢を張って、突き放すように言った。
しかし、珠希は私を小馬鹿にしたようにフンと鼻で笑う。
このまるで根拠のない自信はどこから湧いてくるんだろう?
「別れ話をしに来たんでしょ?」
腕組みをして珠希は言う。
「……はい?」
「他に男がいるのに、真佑巳と続けてるっておかしくない?」
なんか、じわじわと腹がたってきた。
「男……?
真佑巳以外いませんけど。
何も知らないくせに、そちらのしてることを棚に上げてよく言えるね」
「はぁ?
あたしが何したって言うの?」
「真佑巳のこと簡単にふっておいて新しい男と駄目になったからってまた簡単に戻ろうとしてるじゃない。
どこまで自分勝手なんだか。
真佑巳の気持ちちっとも考えてないよね」
私は珠希に口を挟ませず、一息に言って回れ右をした。
心臓はバクバクいっている。
そして背中を向けたまま、「それとストーカーまがいの行為やめてね。犯罪だから」と付け加えて、階段を上がる。
「待ってよ!」
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