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「あっ──」
不意に珠希に腕を強く引かれた私は、バランスを崩して大きく後ろにのけぞった。
──落ちる!
踏み止まろうとしたけど駄目だった。
振り向きざまに階段からダダダ──っと床に転がり落ちる。
「やだっ──なんで落ちるのよ!!」
壁にへばりついた珠希が素っ頓狂な声を上げた。
それほど私の身体は派手に落ちたらしかった。
腰、膝、足首、頬骨、あちこちに激痛が走り、うまく息ができない。
冷たく固い床に転がって、私は低く呻いた。
気を失ってしまえば楽なのに、意識はまったくはっきりしていた。
──痛すぎて吐きそう。
「ねぇ?……大丈夫? 大丈夫だよねっ!?」
珠希は、私のそばに屈もうともしない。
壁にへばりついたまま、私を見下ろしている。
隙あれば逃げ出そうと思ってるんだろう。
──誰のせいでこんな目に遭ってると思ってんの?
せめて、真佑巳を呼びに走ってよ!
訴えたいけど、声にならない。
ただ背中を丸めて痛みに耐えていた。
そのとき──。
「アキラ!」
──真佑巳。
階段を駆け降りてくる音がする。
安心感から力が抜けた私は、ざらつく床に頬をぴったりとくっつけて目を閉じた。
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