世界一

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 僕のおとうさんは、空手の先生だ。  毎日夜六時半から九時半まで、あちこちの道場に行って生徒に空手を教える。  週に五回行くんだけど、毎回毎回行ってるところは違う。道場が多すぎて、毎週同じ所を見てたんではとてもはあくしきれないんだそうだ。  僕もおとうさんに週に三回ついて行くんだけど、全部で何箇所あるのかなんて全然わからなかった。  合宿とか審査会とか、そういう大きな行事の時にはなんびゃくにんもの道場生がいちどうに集まるから、それはほんとうにいっぱいなんだと思う。  道場で教えてる時のおとうさんは、凄くかっこいい。  長年着込まれた白い道着に袖を通して、黒くて金の筋がたくさん入った帯をびしっと締めて腕組みしてるおとうさんの横顔は、まるでテレビどらまに出て来る昔の武士みたい。  ちょっと後ろに後退してきてる髪の毛も、ちょんまげみたいでみょうに似合ってると思う。普段の静かな時と、道場生に気合を入れる時の掛け声のギャップは慣れてないと心臓が止まりそうになる。
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