世界一

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 僕にはおとこきょうだいがいなかったから、おとうさんもいつも一緒にやってくれた。  その時僕は、おとうさんのすごさにびっくりする。僕が必死にバランスをとりながら吊り橋を歩いてるのに、おとうさんはその手摺の部分に立つのだ。  僕が両手両足で落ちないように一生懸命ターザン用のなわにしがみつくのに、おとうさんは片手の、それも親指と人差し指だけでぜんたいじゅうを支えるのだ。  みんながジャングルジムのでっかいのを芋虫みたいに這って進む中、お父さんだけその中に悠然と立って僕に声をかけるのだ。  他にも近くのおっきいデパートに行ったり、お気に入りの本屋さんに行ったり、親戚のおばさん家に行ったりした。  その中でもボーリングは僕のお気に入りだった。やる時はいつも家族みんなで。僕のライバルはもちろんおとうさん。  絶対勝てないのにいっつも点数を競った。僕は小学校低学年の時はあんまりうまくなくて、調子がよくて六十点くらい。酷い時は四十点しかいかない時もよくあった。
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