補色

3/154
前へ
/523ページ
次へ
 注意されるほど派手に騒いでないやつがいないのが逆に不思議なくらいだ。  この教授と講義はそれなりに人気があり、事実中身もある。  筑島先生は経営学では有名な人で、何冊も本を書いておりテレビにも出ることもあるという。  ただその著書を買わないとレポートが書けないというは正直横暴だと思わないでもない。  打ち疲れたノートパソコンのキーボートから指を離し、ふと背後の窓の外を見ると、桜の花が散り出していた。  ゆったりと舞う桃色の花弁に、春ももう終わりかなぁ……などと干渉に耽ったことを思ってしまう。  教室の中はよくきいたエアコンにより適温適湿に保たれており、窓の外に映し出される春の陽気も相まって、余計にけだるさが醸し出される。  しかしその弛緩した時間は同時に余計なことを思い出す心の隙を作ってしまうため、今の僕にとってはあまり歓迎できることではなかった。  なんかこう、ぴりっとした緊張感とか没頭できる集中力の中に身をおいておいた方がマシというか…… 「……はあ~」
/523ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加