‡錯綜(さくそう)する想い‡

2/30
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
  私は不自由な足をちょっと引きずるようにしながらタリーズの店内へと入った。 午後三時。 客はまばらだった。 「まだ二人とも来てないか」 直子が店内を見回しながら言う。 「……珠希は来ないんじゃないかな」 独り言のように小さくつぶやいたのに、直子はすかさずこう返してきた。 「来るよ。 アキラから真佑巳くんを取り返す気満々なんだから」 悪戯っぽい目をして笑われた。 「うーわ。イヤなやつ」 「とにかく座って待とう。 アキラ先行って座ってて。 カフェラテでいい?」 軽く流された。 苦笑が漏れる。 「うん。じゃ、よろしく」 ガラスで仕切られた喫煙席の、四人掛けのテーブルにつく。 一人になるとたちまち不快な動悸に襲われる。 思わず胸元に手をあてた。 ──真佑巳、結局昨夜は連絡くれなかったな。 珠希じゃなくて、真佑巳が来なかったりして……。 ぎゅっと目を閉じる。 ──彼氏を信じなくてどうするの? それこそ、最低の彼女じゃん。 「大丈夫? アキラ」 はっとして目を開けると、トレイを手にした直子が心配そうに覗き込んでいた。 「……うん。平気」 「はい。これ飲んでリラックス」 「お、ありがとう」     
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!