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私は不自由な足をちょっと引きずるようにしながらタリーズの店内へと入った。
午後三時。
客はまばらだった。
「まだ二人とも来てないか」
直子が店内を見回しながら言う。
「……珠希は来ないんじゃないかな」
独り言のように小さくつぶやいたのに、直子はすかさずこう返してきた。
「来るよ。
アキラから真佑巳くんを取り返す気満々なんだから」
悪戯っぽい目をして笑われた。
「うーわ。イヤなやつ」
「とにかく座って待とう。
アキラ先行って座ってて。
カフェラテでいい?」
軽く流された。
苦笑が漏れる。
「うん。じゃ、よろしく」
ガラスで仕切られた喫煙席の、四人掛けのテーブルにつく。
一人になるとたちまち不快な動悸に襲われる。
思わず胸元に手をあてた。
──真佑巳、結局昨夜は連絡くれなかったな。
珠希じゃなくて、真佑巳が来なかったりして……。
ぎゅっと目を閉じる。
──彼氏を信じなくてどうするの?
それこそ、最低の彼女じゃん。
「大丈夫? アキラ」
はっとして目を開けると、トレイを手にした直子が心配そうに覗き込んでいた。
「……うん。平気」
「はい。これ飲んでリラックス」
「お、ありがとう」
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