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そして金曜日。
予定外の残業になり、受け付け時間すれすれに自動ドアの『開く』ボタンを押した。
すぐに名前を呼ばれ、診察室に通される。
「息が上がってますね。
まさか走ってきたとか?」
医師は私の足に視線を落として聞く。
「いや。さすがに走れないです。
気ばかり焦って疲れました」
「あははは。
なるほどね。では診ましょうか」
触診。そしてリハビリ方法を丁寧に教えてもらって、「また二週間後くらいに来てみて」と言われた。
厚地の包帯が柔らかいサポーターに変わり、足が急に軽くなったようでなんか気持ちが悪い。
それでも会計を済ませ病院を出て、車に乗り込む頃には慣れてきた。
解放感からか久しぶりに寄り道をしたくなり、レンタルビデオショップまで足を伸ばすことにした。
──笑えるヤツがいいな。
新作はスルーして、コメディのコーナーを探しながら店の奥へ。
週末だからか。けっこう混雑している。
棚の端からゆっくりと物色していると、後ろから不意に声をかけられた。
「陽」
──この声……。
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