‡明かりが見えない‡

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  翌日、土曜の夜。 私はハンバーグの材料を買い込んで、真佑巳の部屋を訪れた。 電話やメールで足の怪我のことは報告していたのに、真佑巳はドアを開けるなり「足、大丈夫か?」と不安そうに聞いてきた。 「昨日、言ったじゃない。 もうほとんど痛まないって」 「いや。この目で確かめないと安心できない」 「信用ないな……。じゃあほら。見て」 私は玄関先で靴を脱ぎ、ジーンズをたくしあげて、上がり端に足を乗せて見せた。 真佑巳は腰を屈めてサポーターをおろす。 「うん。腫れ引いてるみたいだな」 「でしょ? もう大丈夫だから」 「……よかった」 真佑巳は心底ホッとしたように明るい笑顔を見せて、私の手からスーパーの袋を受け取った。 「メニューはなんだ?」と中を覗き込み、「解った。ハンバーグだ!」と子供みたいにはしゃいだ声をあげる。 「そう言ったじゃん」 私は、半ば呆れ気味に言いながら部屋にあがった。 「めっちゃ腹減ってんだから、ちゃんと食えるもの作ってくれよ」 袋を流しの横に置いて私を振り返り、真佑巳は意地悪く笑う。 「保証はしかねる」 「出た。 『まかせて。愛情こめてとびっきり美味しいの作るから』って言うんだろぉ? 普通」    
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