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玄関を開けた直子は私の後ろに立っている織人を見るなり、大げさにのけぞって「うっ、そっ!」と歓喜の声をあげた。
「直子。夜中だよ」
思わず小声でたしなめる。
「だってさ!
驚くでしょうが」
「こんばんは。
突然すいません」
「織人くーんっ!
そっかぁ。二人くっついたかぁ。
よかった。よかった。
まぁ、入って入って!」
勘違いもはなはだしい直子は、真夜中に不似合いなテンションで私を押し退け、ひょいと織人の腕をとった。
織人は楽しそうに鼻に皺を寄せて、「お邪魔します」と言った。
三人でコタツを囲み、直子のいれてくれたコーヒーで手のひらと胃袋を温める。
コーヒーの香りで気持ちが落ち着いてくると、向かい側で同じコタツに入り談笑している織人の絵がなんだかすごく不思議に思えた。
部屋がとても窮屈な感じだ。
勘違い女はずっとにやにやしていたが、私が真佑巳からの電話の内容を話して聞かせると、まるで陽(ひ)が雲に隠れたかのように陰欝な表情になった。
織人には、珠希との経緯も必要なことだけ話した。
「ふぅーむ……」
腕組みした直子は、綺麗なおでこに皺を刻んでオヤジのようにうなる。
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