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「おかしい……解(げ)せないな」
直子が呟くと、織人は小さくうなずいて同意を示した。
「真佑巳くんおかしいよ。
別れることに納得したんだよね?
なんで?
なんでいまさらアキラにそんなこと言うために電話してくるわけ?」
「知らないよ──いてっ」
投げやりに言いかけたら、直子の手のひらが額に飛んできた。
「偶然織人くんとアキラが一緒にいるとこ見かけちゃった?
自分のことは棚にあげて、怒りにまかせて電話したんかな?
あんたたち、相当仲良く見えたんじゃないの?」
「ないと思う……ってか仲良くしてないし」
「なんかさぁ。
わざとアキラを怒らせようとしてる気がする。
怒らせて、嫌われて、後腐れなく終わりにしたい、みたいな」
「…………」
──そうなの?
真佑巳、私に嫌われたいの?
解らない。
うまく思考が回らない。
「陽は、まだ彼氏のこと思ってるんだろう?」
「思ってる。思ってるー。
たぶんあと半年は引きずるね。
目の前にこんないい男がいるのにもったいない。
ホント気の毒な女だ」
織人の問いに答えたのは直子で、それはおそらく正解だ。
直子は小さなカゴに入っている梅しばの隣に、チロルチョコをさり気なく置くようになった。
私が抵抗なくそれを手にとる時が来るのを待っているらしい。
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