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真佑巳からもらったチロルチョコをずーっと冷蔵庫に入れておいて、ドアを開けてはにやにや眺めていたことを、直子は知っている。
「自業自得だよね。
珠希に振り回されたのは、私が弱いからだし。
真佑巳を信じきれなかったし。
自分から別れるって言ったくせに、いざ突き放されたら馬鹿みたいに動揺して。
なんでもっとどっしり構えられなかったんだろう。
どうやったら、自分に自信が持てるのかな……」
「それが陽なんだから」
カップのふちをなぞりながら、織人が言った。
「彼女とやりあって、彼氏から遠ざけて、『勝った』って満足して安心できる性格じゃないだろう?陽は」
「織人……」
「さすが織人くん。アキラのことよく解ってる」
直子は織人の背中をバンバン叩いて立ち上がると、キッチンでコーヒーのおかわりを入れ始めた。
「辛かったな……」
織人は呟くように言うと、苺味のチロルチョコを手にとった。
織人の気持ちが嬉しくて、喉元に熱いものがこみあげる。
「陽は苺味の食べ物好きだったよな」
包み紙を剥がしながら懐かしそうに言って、織人はチョコを口に入れた。
苺の香りが広がった。
「確かに。苺の匂いが好きで。
そういえばいつのまにか食べなくなってた」
「今でも苺牛乳飲む?」
「ううん。もっぱらビール」
織人は甘いチョコにむせそうになりながら笑っていた。
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