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「部外者の意見ってかなり参考になるんだよ。
それに織人くんなら真佑巳くんの立場で考えられる。でしょ?」
直子はしれっと言って、
織人にマイクを向けるふりをする。
私はその手をぴしっと叩くと、勢いにまかせてこう言った。
「直子の言うとおりだったとしたら、かえってよかったのかも。
きっぱりあきらめがつくよ」
「嘘だね。
泣きそうな顔してなに強がってんだか」
「嘘なんかじゃ──」
私は無駄に食ってかかろうとした。
「陽──」
織人が私の名を呼ぶ。
「……なに?」
「それは陽の本心か?」
落ち着いた織人の声音が、瞬時に私を冷静にした。
──本心なんかであるわけがない。
深く考えたくないから、口からでまかせを言ったんだ。
真佑巳と珠希がよりを戻した?
その事実が後ろめたくて、真佑巳はわざと私に嫌われようとした?
そんなことあるわけないと信じたい。
でも、簡単に別れようと言った私に愛想を尽かした真佑巳の心が、なりふりかまわず全力でぶつかってきた珠希の方へと傾くことも有り得るのだ。
頭が混乱していた。
いつかまた真佑巳と歩み寄れる日がくる。
真佑巳の笑顔は私に向けられる。
その思いがとても強いから──。
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