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「じゃあねー。
タクシー拾って2人仲良く帰ってね!」
ノンは中村くんを助手席に乗せると、優雅に手を振って車を発進させた。
置き去りにされた私は、「ホントに帰っちゃったよ」と、隣の織人を見上げる。
「どうしよう……。
直子に電話してみようか?
飲んでなければ迎えに来てくれると思うから」
「いや、悪いよ。
駅まで歩こう。
陽もけっこう飲んでたからそんなに寒くないだろ?」
「……うん。
織人がいいなら、そうするけど」
織人は笑顔でうなずくと、ジャケットの前を合わせて「行こう」と私を促した。
あの後、席に戻ってからは、中村くんとノンが中学時代の思い出話に花を咲かせていた。
私と織人は相づちを打つだけだった。
10年も前のことをよくもそんなに事細かに憶えているな、と感心しきりだった。
二人の話題には私も織人もちゃんと登場していたが、やはり他人事にしか聞こえなかった。
シメのおにぎりやお茶漬けを食べて、お開きになった。
車に乗り込む前にノンは、無責任にもこんなことを言った。
「一色くんと相馬ちゃん、絶対つき合うべきだよ。
今の彼氏とは別れなさい」
それから中村くんに向き直り、「私、中村くんとつき合ってみたい!」と楽しそうに言い放った。
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