‡ どうして──? ‡

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  織人は直子に手をとられたまま、困惑顔を私に向ける。 私はその表情が愉快で、くすくす笑いをもらした。 直子と織人のおかげで、重くのしかかっていた不安が少し軽くなった。 勇気を出さなければ。 自分のために。 そしてこんな私を親身に心配してくれる直子と織人のために。       送って行くという直子の申し出を丁重に断った織人は、タクシーで帰って行った。 入浴を済ませたあとビールを飲みながら、直子に同窓会の話を聞かせた。 直子は実直な織人のことを誉め倒し、織人と一緒にならなければバチが当たるとまで言った。 「だったら直子がつきあいなよ」 「馬っ鹿だねー。 私にとっては繁ちゃんの方が織人くんの何倍もいい男なの! アキラには織人くんがベストパートナーなんだよ。 なんで解んないかなぁ。 って、真佑巳くんに未練たらたらのアキラに何を言っても馬耳東風ぅー」 「じゃあ言うな」 「アハハハハッ」 けらけらと笑いあい、勢い良くビールをあおった。 寝る前に──夜中の二時を過ぎていたが──真佑巳に電話をかけようと、布団のなかで携帯を開いた。 酔いにまかせ、どうせ電源を切っているんだろうと思いながら携帯を耳にあてる。 予想に反して呼び出し音が鳴った。 心臓が飛び跳ねた。 酔いは一瞬で冷めた。 コール音が一回、二回、三回……十回。 ──出ない。 ため息を吐き出し、携帯を閉じた。  
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