‡ どうして──? ‡

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   「おぉ、いいとも。 つき合おう。つき合おう。 このままじゃ柿崎があんまり気の毒だ」 酒が程よくまわっている中村くんは、そんな失礼な返事をして案の定ノンに突き飛ばされていた。 中村くんもノンも心根の優しい人間だと思った。 織人の傷には触れず、あくまで楽しい同窓会の雰囲気を壊さないようにと気遣ってくれていた。   私はそういう気配りがうまくできない。 不器用な人間だとつくづく思う。   「楽しかったな……」 ポケットに手を突っ込んで歩きながら、織人が言った。 「うん」 「……楽しくて、つい飲み過ぎて余計なことを喋り過ぎた。ごめんな」 「なに謝ってんの? もう謝らないんじゃなかったっけ?」 織人が、ぱっと破顔する。 私もポケットで手を温めながら歩いた。 泣いたせいで酔いはほとんど冷めていたから、夜風が頬に痛かった。 織人の歩幅は大きい。 大きいぶん、私の歩調に合わせてゆっくり歩いてくれていた。 「謝るのは私のほうだよ。 織人のこと、何も解ろうとしてなかった。 自分のことしか考えてなかった」 「いいんだ。 子供の頃なんてみんなそうだよ。 自分のことだけで精一杯だ。 大人になった今だから、そう思えるんだよ。 勇気出して、陽につき合ってって言って……いいよって返事もらえただけで、俺は満足だった」  
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