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「…………」
「なんて顔してるの?」
「だって……」
私、適当に返事したんだよ?
どうせ約束なんてすぐに忘れるからって──。
それなのに、そんないい加減な約束を支えにだなんて。
「またぁ。
自分を責めてるな?」
織人が悪戯っぽい目で私の顔を覗き込む。
「俺が勝手に支えにしたの。
陽は、ったく女々しいなとか、気持ち悪いんだけどとか笑い飛ばしておけばいいんだよ」
「……できないよ」
──できるわけないじゃん。
「あははは。
そのひとことでちょっと報われた。
タクシー停まってる。
ほら、歩く」
織人に促され、ゆっくり歩きながら考える。
どうして織人の笑顔は、私のすべてを許してくれるように感じるんだろう。
「どうして私だったんだろ?
織人に好意抱いてる子、いっぱいいたと思うよ?」
私は思うままを、ぼそりと口にした。
「それを言うなら……。
陽はどうして俺じゃなくて今の彼氏なの?」
織人が意地悪く切り返す。
「う……ん……」
「どうしてなんて考えるからややこしくなるんだよ。
好きなものは好き。
単純でいいんだ。
陽も理屈抜きで、彼氏が好きなんだろう?」
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