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「……まぁ」
理屈抜きで真佑巳のことが好き──。
ぎゅっと襟首を絞めあげられたみたいに苦しくなった。
『別れたんだよ』
そう言ったら、織人はどんな反応をするだろうか。
私は、織人に……。
──馬鹿だ。
織人の優しさに甘えて慰めてもらったとしても、何も変わらない。
それこそ、織人にとったら最低の女だ。
そうはなりたくない。
タクシーのドアが開き、先に織人が乗り込もうとしたとき、私の携帯が鳴った。
「────」
真佑巳からだった。
「電話?」
織人は、携帯を手に棒立ちになっている私の腕をとって、タクシーから離れる。
「彼氏だろ?
出なよ。待ってるから」
そう言って背中を向ける。
「ごめん」
突然の電話に、心臓が破裂しそうなほどドクドクいっている。
私の『別れよう』というメールに、『わかった』という返事が届いてから5日。
真佑巳から何を聞かされるのか。
怖さが先にたった。
私は織人から離れ、震える手に力をこめて通話ボタンを押す。
「……はい」
『アキラ?』
「うん」
『今、電話してて大丈夫なのか?』
抑揚がなく、暗い、それでいて刺を感じる口調だった。
「大丈夫だよ。なんで?」
声が震えてしまう。
『別に……』
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