‡ どうして──? ‡

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  そう言ったきり、沈黙が続いた。 耳の奥で鼓動が響く。 「真佑巳……?」  『……ちゃんと言おうと思ってさ。 メールで別れたっていうんじゃ後味悪いし』 動悸がますます激しくなる。   「ごめん……。 私がメールで済まそうとしたからだよね。 面と向かって言えそうになくて……」 声がかすれた。 『短いあいだだったけど楽しかったよ』 私の言葉には応えず、ぶっきらぼうに真佑巳は言う。 『それから……オレのせいで嫌な思いさせて悪かった。 珠希のこと。 ずっと罪悪感でしかなかった……』 再び沈黙がおりた。 頭がガンガン鳴っている。 『けど……アキラにもやっぱり男がいたんだな。 って珠希はオレの女じゃないけど。 変な言い方だけど、正直ホッとしたよ。 ホントならオレもアキラを責めたいところだけど、いまさら遅いし。 お互い様ってことでチャラな』 「…………」 真佑巳は低く笑った。 投げやりな嘲笑に聞こえた。 言葉が出てこない。 お互い様? なに言ってるの? 暴れる鼓動で頭が割れそうだ。 『これでオレとはきっぱり切れるんだからさ。 心置きなくアキラの好きにしろよ。 新しい彼氏と仲良くな。 ……じゃな』 「待っ──」   電話は切れた。 耳から離した携帯を呆然と見つめる。
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