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『夕べから友達来てて、今寝てるから』
「…………」
思いもよらない真佑巳の返答に、私は言葉を失った。
友達?
今、寝ている──?
ベッドで上半身を起こし、億劫そうに電話に出ている真佑巳と、その隣にしどけなく横たわる珠希の姿が頭を過(よぎ)った。
『帰ってくれ。
オレはもう話すことない。
電話とかも迷惑だから。
これっきりにしてくれよ』
「友達って……」
『話す義理ないだろ。切るぞ』
「待って!」
真佑巳の口調はどんどん冷たくなっていく。
その表情を想像したら、また身体が震え出した。
これ以上真佑巳に嫌われたくない。
このまま、逃げ帰りたい。
今までの私なら電話を切り、踵を返しただろう。
それを押し留めたのは、変わりたいという強い願望と、直子と織人の大きな支援と、何より──真佑巳を好きだという揺るぎない想い。
「真佑巳聞いて。
珠希さんとやり直すならそれでもいいんだ。
ただ、それならちゃんと真佑巳の口から聞きたい。
私も真佑巳に謝りたい。
メールで終わりにしようとしたこと。
それから、今の私の気持ちを聞いて──」
ぶつっ──と。
容赦なく通話は断ち切られた。
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