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自分の心臓の音が喉元で響き、運転席でじっと座って待つのは本当に苦痛だった。
音楽をかけても、歌詞もメロディーも頭を素通りしていく。
どくっ、どくっ、どくっ……。
膨張した心臓が、喉を突き破って飛び出してきそうな感覚に耐え切れず、煙草を手に車を降りる。
煙草に火を点けたが、うまく呼吸できずに激しくむせて、すぐまた車に戻った。
──なにやってんだか。
涙目になりながら、助手席に置いた携帯を手に取ると、タイミングを計ったようにブルブルと震え出した。
──真佑巳!?
「直子……」
直子からのメールだった。
[大丈夫かい?
真佑巳くんには会えた?
何かあったらすぐ電話するんだよ]
真佑巳が降りて来るはずの階段を気にしながら、急いで返信する。
[ありがと。大丈夫だよ。車で待ってるところ]
[部屋に乗り込んだんじゃないんかい!?]
すぐに返ってきた直子のメールの文面に、思わず頬がゆるんだ。
こんな状況でも笑える自分にホッとすると同時に、親友直子の存在を心からありがたいと思った。
[いざとなったら乗り込むよ]
そう返事を打とうと、視線を階段から携帯画面に戻したとき、視界の端で黒い影が動いた。
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