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昨夜はほとんど眠れなかった。
出掛けに直子が気遣っていれてくれたコーヒーの味が、緊張からかよく解らなかった。
早い時間に訪ねれば、真佑巳はきっと部屋にいる。
そう踏んで、10時前にアパートを出た。
真佑巳のアパートに面した道路脇に車を停める。
真佑巳の車はあった。
友人か、考えたくはないけれど、珠希の車で出かけていなければ真佑巳は部屋にいる。
時計を確認すると、ちょうど10時だった。
深呼吸をして車を降りる。
カーテンで閉ざされた真佑巳の部屋の窓を見上げ、階段へと向かった。
逸る鼓動をなだめるように胸に手を当てて、ゆっくりと階段をあがっていく。
『珠希、居たりしてね』
直子の声が頭をよぎる。
私は──いったいどうしたいのか?
どうなれば満足なのか。
今はまだ、はっきりと答えが出せない。
とにかく真佑巳と向かい合い、自分の想いを伝えたい。
メールで簡単に別れを告げ、終わりにしようしたことを心から謝りたい。
真佑巳に誤解され、突き放されたことがショックで悲しかったと伝えて、どうして電話であんなことを言ったのか、真佑巳の本心を確かめたい。
真佑巳にもし珠希とやり直すと言われたなら……今すぐには無理でも、私はそれを受け入れなければ。
それで真佑巳が幸せになれるのなら。
そう思う反面。一縷の希望にすがりたいと思う私がいる。
まだ私のことを好きでいてくれるという希望。
私が、真佑巳を好きな気持ちを簡単には捨てられないように。
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