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真佑巳の中に、わずかでも私を思う気持ちが残っているなら、きっと連絡をくれる。
そう信じて握りしめた携帯を見つめ続けた。
真佑巳が誕生日プレゼントにくれたショートコート。
正月デートの時に着たきりで、もったいなくてしまっておいたコートを迷わずに羽織ってきた。
何度も何度も、似合うと言って笑っていた真佑巳。
あの時は恥ずかしくてたまらなかった。
でも今は、あの真佑巳の笑顔をもう一度見たいと心の底から願う。
真佑巳──。
私はいとも簡単に、現実から逃げたんだね。
『離れることしか考えられないか?』
『オレはアキラと一緒にいたいよ』
真佑巳は熱心に諭してくれたのに──。
受けとめる努力をこれっぽっちもしなかった。
突き放されて当然なのかもしれない。
でも──。
勝手過ぎるかもしれないけど、どうか、もう一度やり直すチャンスを与えて。
私は携帯を両手で握りしめ、祈るように額に当てた。
待っている時間は気が遠くなりそうなほど長く感じたけれど、実際は数十秒だったのだろう。
手の中の携帯が震えた。
手がかじかんで、うまく携帯を開けない。
気持ちばかりが急(せ)いてしまう。
「真佑巳っ──」
叫ぶように名前を呼んだ。
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