‡ わすれもの ‡

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    「私のしたこと、気にさわったならはっきり言ってよ? たぶん私なら大激怒してるから」 「なんだそれ?」 「あははは。 アキラはしないよね。 本当にごめんっ!」 直子はコタツに両手をつくと、額を押しつけて大声で詫びた。 「やめてよ。 直子の気持ちは解ったから。 それに、もう真佑巳にとって私と直子は同等な存在だよ。 私がどうこう言える立場じゃない。 ただ……」 「ただ?」 「メール文が長いのが癪にさわった」 直子はぶっと吹き出した。 「笑うな! ホントに、三行より長いメールなんてほとんどこなかったんだから」 「それはあんたが超短文メール送るからでしょうが」 「あれ? ばれてたか」 今度は二人揃って吹き出した。 直子を責めるつもりなんて毛頭ない。 私を思ってしてくれたことだ。 失恋の痛手をいやしてくれているのは誰でもない、直子なんだから。 「真佑巳くんは珠希とはやり直さないと思うって。 でもそれをアキラに言ったら、アキラは織人くんと付き合うこと絶対ためらうからって。 んで、そんなメールがきた」 「…………」 「図星だね」     直子はカップを手にすると、「ちょっと飲もうか」とキッチンに缶ビールを取りに立った。  
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