‡ わすれもの ‡

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    「はいよ」 「あ、ありがと」 直子はプシュっとプルタブを起こし、喉を鳴らしてビールを飲んだ。 「うまいっ」 「直子、ホント美味そうに飲むよね」 「なにしみじみ言ってんの?」 「いや。 真佑巳と直子って似てるとこあるなって……。 美味いって言う口調とか。 笑いかたとか。 だから好きになったのかな」 「なに? それはカミングアウトか!? そんなに私が好きなのか!?」 直子はふざけて唇を尖らせ、キスする真似をした。 「バーカ」 「嬉しいよ。私もアキラ好きだもん」 「ちょっと。もう酔っ払ったか?」 「ホントだよ。 アキラはいいコだ。 私が勝手に真佑巳くんにメールしたって怒らなかった」 「言ったじゃん。それは──」 「普通怒るよ。 アキラは人を傷つけない。 前にも言ったけどさ、人一倍傷つきやすいから傷つけられないんだよね」 「……そんなことない。私は」 「弱いからって言うのはなしだよ」 「…………」 「アキラに話したことなかったけど。 私さ、今まで付き合った男たちにそりゃあ酷いことしたり、されたりしてきたよ。 詳しく話したらたぶんアキラに嫌われるな。 男を見る目がなかったと言えばそれまでなんだけど……。 一回寝ただけで終わった男もいた。 この男はなんか違うって思ったら、そのまま連絡断ったりした。 逆に殴られたり、浮気されたり騙されたりもした。  
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