‡ わすれもの ‡

2/19
前へ
/37ページ
次へ
    ヒカリはとても幸せそうで、すごく綺麗だった。 光沢のある真っ白いワンピースの上に淡いラベンダー色のショールを羽織り、私の義兄になる人と並んで、友人たちに囲まれ談笑している。 明るいシルバーのスーツに身を包んだ義兄は、ヒカリが言っていたとおり見た目は30代前半くらいだったが、如何せんメタボ体型。 さぞかしコックコートが似合うのだろうと思わせる。 ヒカリが太った異性を伴侶に選ぶなんて想像もしなかったな。 義兄はヒカリにベタボレなのが一目瞭然だ。 目尻は下がり、鼻の下は伸びきっている。 ──どうかずっとその大きな身体と穏やかな笑顔で、ヒカリを一生守ってやってください。 私は両親と同じテーブルについてイタリアンを堪能していたが、ほとんど平らげてしまうと居心地が悪くなり、トイレに立ったり外に出て煙草を吸ったりして時間を潰した。 お開きが近づくと、ヒカリが私たちのテーブルにやってきた。 「アキラ。今日はありがとね。 プレゼントまでもらっちゃって」 「いや。なにが必要か聞いとけばよかったよね」 「ううん。さっそく使わせてもらうよ」 ヒカリに送ったのは、キッチングッズだった。 あっても困らないような、タッパーやら瓶のセット。 「よかった」  
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加