‡ かけがえのないもの ‡

4/18
前へ
/37ページ
次へ
    この1年。 真佑巳を思い出さない日はなかった。 直子が渡部くんの話をすれば、必然的に真佑巳の話も出てくる。 どうしているだろう。 珠希とつき合っているんだろうか。 それとも別の新しい彼女ができただろうか。 幸せでいてくれるならいいのだけれど。 そうして、珠希のことも考えた。 身体と心の傷は癒えただろうか。 元気を取り戻したろうか? あの時は、挑むような眼差しを疎ましく感じていたけれど、珠希はそれくらい強気な女の子を貫いていてほしい。 そう願っていた。 私も真佑巳も披露宴が終わるまで、お互いの存在を意識しながら赤の他人を装って、近づくことはしなかった。 披露宴がお開きになり、参列者を見送るために会場の出口で待っている新郎新婦と、両家の両親に挨拶するために、私は長い列の最後尾に並んだ。 あいだに4人挟んだ前方に真佑巳の頭が見えた。 真佑巳は渡部くんと直子に固い握手をして肩を叩き、両家の両親に深々と頭を下げてロビーに向かって歩いていった。 ──真佑巳……。いま幸せ? 私はその背中に問いかけた。    
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加