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「直子をよろしくお願いします」
私は渡部くんと握手を交わしながら頭を下げた。
「ありがとう。次は陽さんの番だよ」
渡部くんは喜びを全身で表すように、握った私の手を、肩を揺らしながらぶんぶんと振った。
「いや、私はまだまだ──」
「アキラッ!」
やたらご機嫌な大声で私の名を呼ぶのは──。
「直子ぉ……。あんた酔っ払ってんの?
新婦ができあがってるってありえないんだけど!?」
「いいじゃん。幸せなんだから。
ちゃんと立ってるでしょ?」
明らかにチークの色とは違う、真っ赤なほっぺたをした新婦がドレスの裾を持ち上げようとするので、その手をとっさに払った。
「こら! まったくもう」
けらけらと豪快に笑い飛ばす新婦。
私は彼女の代わりに、渡部くんのご両親にぺこぺこと頭を下げる。
「アキラ、ほい」
「は?」
直子が差し出したのは、自分のブーケと同じ花で作られた可愛いらしいミニブーケだった。
「なに?」
「次はアキラが幸せになる番だから」
「や、別に不幸じゃないから心配いらないんだけどな……」
ぼそぼそと呟いていると、「ふん!!」と胸元にブーケを押しつけられた。
反射的に受け取ってしまう。
「織人くん、迎えに来るんでしょ?」
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