‡ かけがえのないもの ‡

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    「真佑巳は少し痩せた?」 「そうか? 髪型のせいだろ」 「そっか……」 会話が途切れる。 私は無意識にカールをかけた毛先をつまんだり、伸ばしたりした。 「初めて見た」 「うん?」 真佑巳を振り向くと、こっちをじっと見つめていた。 「アキラのそういう髪。 いいな、女っぽくて」 「……あ、ありがと」 なんなんだろう……。 この罪悪感めいたものは。 自意識過剰過ぎて笑えるな。 『どうかな? おかしくない?』 この髪型を織人に似合うか訊ねた時、織人はめちゃめちゃ照れて、『見違えたよ。とても似合ってる』って目を細めて言ってくれた。 私はすごく嬉しくて、柄にもなくその場でくるっとターンして見せたんだ。 「彼氏、待ってんの?」 その声にはっと目を見開いた。 「うまくいってるんだろ? 繁規に聞いてるよ」 「真佑巳はどうなの?」 質問に質問で返した。 「オレは……」 真佑巳は、ふっと鼻で笑って「合コン三昧に逆戻りだよ」と自虐気味に言い捨てる。 「えっ──そうなの?」 「アハハハハ……。 嘘だよ。 相変わらずだな。何でも真に受ける」 「ひどいな」 「悪い」と言いながら、真佑巳の目はにやにやと笑っている。    
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