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「別にいいよ」
私はぷいと目を逸らし、バッグの持ち手をもてあそびながら、真佑巳はもう完全に吹っ切れているのかもと思った。
変に意識している自分が恥ずかしい。
──珠希のことを聞いてみようかな……。
と、顔を戻すと──。
「あー、オレも結婚してぇー」
突然大声で言って、真佑巳は組んだ手をうんと前に突き出した。
「繁規の顔、にやけてとろけそうだったもんな。
幸せですオーラ眩しかった」
「……うん。直子も眩しかった」
「な。
繁規は一発で一生の幸せ手に入れたんだ。
素直に羨ましいよ」
「……真佑巳は」
「ん?」
「真佑巳は……その、珠希さんとは?」
「どーしたの? その花」
真佑巳ははぐらかすように引き出物の袋から覗くブーケを指差した。
「直子にもらったの」
「次はアキラの番だって?」
「……」
真佑巳は眉をくいとあげて、悪戯っぽく笑う。
「そういう意味だろ?」
「……そう言われたけど」
「いいじゃん? 早く幸せになれ」
真佑巳は左手を伸ばし、ブーケの花びらを指先で弾いた。
「な?」
花びらに触れた真佑巳の手が私の肩をぽんと叩く。
そうしてそのまま数秒、肩に乗せられていた。
「私の質問に答えてないけど」
「あぁ、珠希?」
私は無言でうなずく。
真佑巳の手のひらがすっと離れた。
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