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ヒカリは「うん」とうなずいた。
そうして、私だけに聞こえるように小声で言った。
「部屋の片付けしてたら、アキラのものが出てきてさ。
ごめんね。
箱に入れて居間に置いてあるから」
「私のもの?」
「借りっぱなしになってた本とか漫画とか色々」
「あぁ……」
ヒカリはバツが悪そうに首を竦める。
その顔は子供の頃のままだ。
「あたしがいなくなったら、父さんも母さんも淋しいと思うから、たまには帰ってやってね」
「……うん」
解ったと言いながら親に目をやる。
どう見ても新婦の両親という幸せオーラは微塵も感じられない。
むしろ不機嫌そうだ。
義理の息子になる男がバツイチで、娘とは一回りも年の差があり、しかもできちゃった結婚だということが、両親にはかなりショックだったらしい。
別に、人様に迷惑がかからなければ、どんな生き方をしようがかまわないと思うんだけどな。
結婚にだって、『これが正しい形』なんてものはないはずだ。
やっぱり、両親世代の人間は世間体とやらに振り回されてしまうんだろうな。
「頼んだからね」
ヒカリは笑って私と両親に手を振ると、新郎のもとへ歩み寄っていった。
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