‡ かけがえのないもの ‡

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    「もう大丈夫みたいだな。 いい恋愛してるんだろ? 表情がすごく明るくなった。 これからは、ずっと前だけ向いて歩いて行けるな」 真佑巳は笑顔をとどめたまま、諭すように言う。 「…………」 「オレもそろそろ前だけ向いて進まないとな。 これ以上アキラに置いていかれないように」 真佑巳の真摯な眼差しが眩しくて、私はうつむいて言葉をつないだ。 「置いていってなんかないよ……。 あのさ、真佑巳」 「うん?」 「真佑巳が直子に送ったメール。 見せてもらったよ」 「……そっか」 「背中押してくれてありがと。 私が前に進めたのは真佑巳のおかげ」 「泣きながら打ったんだ、あのメール」 今まで聞いたことのない、真佑巳のかぼそい声につられて顔を上げる。 と──。 「アハハハハ──」 私と目が合うなり大爆笑する真佑巳。 のけぞって笑うって失礼過ぎない? 「いちいち必死な反応するよなぁ。アキラはホントおもしれぇ」 「笑うな!」 「笑うし!」 「このっ」 一発ひっぱたいてやろうと思わず振り上げた右手を、真佑巳の左手ががしっとつかむ。 驚いている私にとびきりの笑顔を見せて、真佑巳は握手をしてきた。    
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