6人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃな。話ができてよかったよ」
真佑巳は呆気にとられるほどあっさりと、私の手を放し立ち上がった。
そうして軽く手を振って、私に背中を向け歩きだす。
「真佑巳っ!」
私は真佑巳を呼び止めながら立ち上がった。
そして、顔だけこちらに向けた真佑巳に言う。
「私も。
話せてよかった」
真佑巳はほほ笑み、再び背中を向けたかと思うと、くるりと踵を軸に回れ右をした。
「言い忘れた」
「……なに?」
「オレさ、つい最近、彼女できたんだわ」
真佑巳はにんまりと笑い、顔の横でぱっと右手を広げる。
──こいつっ!
言い忘れたとか白々しい。
絶対わざとだ。
真佑巳の得意気な顔がなんだかすごく可笑しくて、からかわれたことが嬉しくて──。
私は心のそこから笑い声をあげた。
「よかった。おめでとー!」
「おう。今度こそお互い幸せになろうな!」
「うん!」
私は手を振りながら、佐藤一弥と珠希がいる輪の中に入っていく真佑巳を見送った。
最初のコメントを投稿しよう!