第15話

‡ かけがえのないもの ‡

「そうだ。
宏輔から電話あったんだ」

「中村くん？　なんだって？」

「できちゃったから結婚するって──」

「えっ!?　マジですか？」

できちゃったってのは、もちろん赤ちゃんで、赤ちゃんの母親は──ノンだ。

「ちょっとー。展開早すぎない？
すぐ別れるとか言いだしそうで怖いんですけど」

織人は楽しそうに笑いながら「大丈夫だよ」とうなずく。

「そうかなぁ」

「あぁ見えて、責任感の塊みたいな男だから。
柿崎に出会うまでは、本気で人を好きになれなかったってことだよ」

「ふん……。
織人が言うならきっとそうなんだね。

また結婚式かぁ。忙しいね」

「そうだな。
なんか周りが幸せだと、幸せが伝染してくるよな」

「そうだね」

「今度は一緒に披露宴出られるぞ」

織人がこっちを向いて、子供みたいに笑った。

「うん」

私もつられて笑顔になる。
とても温かいもので満たされる。

ブーケを見つめながらしみじみ思った。

出会いはやはり必然で──。

直子と渡部くん。
ノンと中村くん。
珠希と佐藤一弥。

私と織人──。

そして、真佑巳にも新しい出会いが訪れた。

一生涯幸せでいられるか、先のことは誰にも解らない。

けれど──幸せであり続けるための努力を惜しまず続けていけばいい。

けして幸せにあぐらをかいてはいけないんだ。

いつまでも。
必然の出会いに感謝して。