‡ わすれもの ‡

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    小さな段ボール箱を抱えて帰宅すると、迎えに出てくれた直子は「なにそれ? 変わった引き出物だねぇ」とケラケラ笑った。 「ヒカリの置き土産だよ。 帰りに実家寄って取ってきたんだ。 あ、さんきゅ」 直子のいれてくれたコーヒーを一口飲んでから、箱のテープに手をかけた。 「うわ──」 「どーした?」 直子が隣から覗き込む。 「ガラクタじゃん……。 こんなもの、捨ててよかったのに」 私はぶつぶつ言いながら、とりあえず中身を取り出した。 子供の頃読んでいた漫画雑誌やコミックス。 文庫本。 シャーペンやら新品の消しゴム、定規セット……。 「辞書だ……」 小さな和英辞書まで出てきた。 返すからとヒカリに半ば強引に奪われ、そのままになっていたものがこんなにあったんだ。 しかし、私のものだってよく憶えてたな。 「アキラ、これ挟まってた……」 漫画雑誌を物色していた直子が、封筒を差し出した。 「手紙?」 受け取って宛名を見て、裏を返すまでもなくすぐに解った。 その几帳面で綺麗な文字。 ──織人からの手紙だ……。 「お姉ちゃん、これはないよなー。 アキラ宛ての手紙を仕舞いこんでたの?」 「……まぁ、珍しくはないけどね」 「嘘っ!!」 直子は本気で驚いていた。 最近届いた手紙ではなさそうだ。 真っ白だったと思われる封筒は薄汚れて、角は折れ曲がっている。      
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