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いったいいつ届いた手紙なんだろう。
私は丁寧に封を剥がして、便箋を取り出した。
少し黄ばんでいたが、やはり白の縦書きの便箋だった。
陽へ。
初めて手紙を書きます。
昨日、高校の卒業式でした。
陽も卒業おめでとう。
僕は来月から社会人です。
工業系の高校を出たので、車の製造工場で働きます。
不安が大きいけど、頑張るしかないよね。
陽は大学に進むのかな?
進学、就職どちらにしろ、充実した毎日を送っていこう。
そうそう。陽は今でも苺味の食べ物が好きですか?
僕はコンビニに寄ったりすると、つい苺味のお菓子を買ってしまうよ。
陽と過ごしていた頃を思って、すごく懐かしい気持ちになります。
毎日無事に過ごしていますか?
独りでいろんなことを抱え込んでいませんか?
携帯番号とメールアドレスを書いておきます。
よかったら返事もらえると嬉しい。
ではまた。
お互いに身体に気を付けて新生活頑張ろうな。
一色織人
──6年前にくれた手紙。
やっぱり、誠実で優しくて。
この部屋で苺味のチョコをつまんでいた織人の、やわらかな表情がまぶたに浮かぶ。
──織人。
返事待っていてくれた?
まさか私が6年後の今頃、読んでいるなんて夢にも思わないよね。
ごめんね……。
返事書けなくてごめんね。
いまさらヒカリを恨んでも仕方ないけど、なんだか悔しくて、すごく悲しくて涙が出てきた。
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