‡ わすれもの ‡

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      「私も読ませてもらっていい?」 「あ……うん」 私は涙を慌てて拭って、直子に手紙を渡した。 二人ともこたつに入ると、私は鼻水をすすりながらコーヒーを飲み、直子はじっくりと手紙に目を通していた。 やがて手紙をたたんで私に手渡しながら、直子は言った。 「アキラ……。 そんな泣き虫じゃなかったよね」 「…………」 「織人くんがアキラを泣かすんだよね?」 私は丁寧に便箋を封筒に仕舞い、織人の書いた『相馬陽様』という文字を見つめながら言った。 「なんでだろ……。 自分でもよく解らない」 ホントに。どうして織人のこととなると、うそみたいに涙腺がゆるんでしまうんだろう? 「アキラは織人くんが好きなんだよ」 「────」 「好き?……違うな。愛だな」 「……直子」 「もういいじゃん。認めようよ」 私が否定をすればゲンコツが飛んできそうな厳しい表情で、直子は腕組みをした。 「真佑巳くんと別れた日。 織人くんに電話で報告した時も泣いてたよね?」 「あれは……」 「別れたことが悲しくて泣いたんじゃない。 もちろんちょっとは悲しかったかも知れない。 けど、アキラの中では覚悟できてたことでしょ? 織人くんの言葉が嬉しくて泣いたんだよね?」    
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