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「直子に報告したよ。
喜んでくれた」
「そうか。よかった。
直子さんには本当に世話になったもんな」
「うん。直子がいなかったら、私いま、織人とこうしていなかったと思う」
眠る前の数分間、布団のなかで織人の腕枕に頭をあずけておしゃべりをするのが、私たちの習慣になっていた。
織人の腕枕は本当に落ち着く。
最初は織人の腕が痺れることを気にして、安心して頭をあずけられなかったけど、『痺れたらちゃんと言うから気にするな。俺、そんなに我慢強くないから』って、織人は笑いながら言ってくれた。
それからは、甘えることにしている。
たまにはあまりに心地よくて『おやすみ』も言わず、そのまま寝入ってしまうこともあった。
そんな時は次の晩、私が織人を腕枕する。
ほんの1分くらいで『いでで……』って音を上げて織人の失笑をかうけれど、それはそれで楽しい。
「……陽」
「うん?」
「幸せになろうな。
今も幸せだけどさ、これからもっと……」
「……うん」
薄明かりのなか、あらたまって織人に見つめられた私は、照れてその胸に顔をくっつけた。
織人の心臓の鼓動はとても力強くて……。
織人に心も身体も丸ごと包まれていることが嬉しくて、私は涙ぐんだ。
織人は腕枕をそっと外し、私の背中に腕を回して優しくぽんぽんと叩いてくれていた。
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