‡ 3年後の私 ‡

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      4月──。 市役所に婚姻届を提出に行った。 これが所縁(ゆかり)というものなのか──私たちは意外な人物に再会した。 織人が私の手を引いて、背中を向けて何か手続きをしているその男に近づく。 瞬時には、その白髪頭の初老の男が誰なのか解らなかった。 織人の職場の人なのかな──なんてのんびりと構えて、織人の斜め後ろをついていく。 「お久しぶりです。 先生」 男にそう声をかけると同時に、織人は私の手を強く握った。 ゆっくりと振り向いた男は、いぶかしげな表情で織人と私をまじまじと見た。 ──田浦。 私のトラウマの元凶が目の前に立っていた。 膝と、織人に繋がれていない方の手の指先が細かく震え出す。 織人は繋いだ手をそっと外し、私の背中に添えた。 その温かな手のひらが私に落ち着けと言っているようで、私は細く長くゆっくりと息を吐いた。 「憶えてますか? 一色です。 小学校でお世話になりました」 田浦は眉間の皺を深くして思案していたが「……あぁ!」と声をあげた。 「一色くん。 そうだ、思い出したよ。 優等生の一色織人くんだね」 変わらない、もったいぶった話し方。 「優等生ぶっていただけです。 それと……中学のとき両親が離婚したので、正確には一色ではなく山下織人です」      
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