弐 食欲

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「げほっ、ごほっ……うぅ……」  あれから、どのくらい走ったのだろう。  落ちかけていた日は完全に見えなくなり、辺りは完全に真っ暗だ。  さらに、僕の今居る場所が、暗さに拍車を掛けている。  街の外れの林。とにかく走っていたらこんな場所に来てしまっていた。 「寒っ……」  ぶるり、と体が震えた。  もう秋口だ、日が落ちれば一気に冷え込む。  早く家に帰って暖を取りたいのだが、いかんせん迷ってしまったのだ。  それも全て、僕が何も考えずに逃げたい一心でここに来てしまったからだろう。  あの時はどうかしていた。気分も落ち着き、頭痛も治まった今なら冷静に考えられる。吐き気は今も続いているが。
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